養育費が取り決めなしだった場合はどうなる? 養育費の決め方を紹介
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裁判所が公表している司法統計によると、2022年に津家庭裁判所で受理された養育費請求調停は236件、養育費請求審判は33件でした。このことからも多くの方が養育費に関するトラブルを抱えていることがわかります。
夫婦に子どもがいる場合、離婚時には子どもの養育費を取り決めることが多いです。しかし、何らかの事情により養育費の取り決めなしで離婚をしてしまうケースもあります。このようなケースであっても、後から養育費の取り決めをすることが可能ですので、早めに養育費の取り決めの手続きを進めていきましょう。
今回は、養育費の取り決めなしで離婚した場合における養育費の決め方について、ベリーベスト法律事務所 津オフィスの弁護士が解説します。
1、養育費を取り決めていなかった場合はどうなる?
養育費の取り決めなしで離婚をしてしまった場合、元配偶者に対して、養育費を請求することはできるのでしょうか。
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(1)養育費の取り決めなしで離婚しても養育費の請求は可能
養育費の取り決めなしで離婚してしまったとしても、養育費の請求を諦める必要はありません。
養育費は、子どもの監護や教育のために必要になる費用のことをいい、実際に子どもを監護している監護親が、監護をしていない非監護親に対して請求できるものになります。非監護親も、子どもの親である以上、離婚したからといって支払いを逃れることはできません。また、離婚時に養育費の取り決めをしなければならないという決まりもありません。
そのため、離婚後であっても養育費を請求することは可能です。 -
(2)過去の養育費をさかのぼって請求するのは難しい
養育費の取り決めなしで離婚をしてしまっても、養育費の請求は可能です。
しかし、養育費は、養育費の支払いを請求した時点から支払い義務が認められるというのが実務の取り扱いです。そのため、養育費の取り決めをしていなかった場合、過去の養育費をさかのぼって請求するのは難しいといえます。
ただし、相手が過去の養育費も含めて支払いに応じてくれるのであれば、過去の養育費を受け取ったとしても特に問題はありません。そのため、交渉段階では、過去の養育費も含めて請求してみるとよいでしょう。
2、離婚後に養育費を取り決める方法とは?
離婚後に養育費を取り決める場合、以下のような方法で行います。
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(1)相手との話し合い
養育費の取り決めなしで離婚をしてしまった場合には、早めに相手に連絡をして、養育費に関する話し合いを行うようにしましょう。すでに説明したとおり、養育費は、請求をした時点から支払い義務が生じますので、養育費の請求をしたことおよびその時期を明確にするためにも、配達証明付きの内容証明郵便を利用して養育費の請求を行うのがおすすめです。
相手との話し合いでは、以下のような事項の取り決めが必要です。- 養育費の金額
- 養育費の支払い時期
- 養育費の支払い期間
相手との話し合いで合意に至った場合には、その内容を書面に残しておくことが大切です。後述するように、公正証書を作成しておくことが望ましいでしょう。
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(2)家庭裁判所の調停または審判
相手との話し合いでは養育費に関する合意が成立しない場合には、家庭裁判所に養育費請求調停の申立てを行います。
調停では、当事者同士が直接話し合うことはありませんので、感情的な対立のある当事者であっても冷静に話し合いを進めることができます。ただし、調停は、あくまでも話し合いの手続きですので、当事者双方の合意がなければ調停は不成立となります。
調停が不成立になると、自動的に審判という手続きに移行します。審判は、調停のような話し合いの手続きではなく、裁判官が一切の事情を考慮して養育費の金額などを決定する手続きです。調停が成立しなかった場合でも、審判により必ず養育費に関する結論が出されます。
3、養育費の金額を決める方法
養育費の金額は、どのような方法で決めればよいのでしょうか。以下では、養育費の金額を決める方法を説明します。
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(1)養育費算定表に基づく金額が養育費の一応の目安になる
養育費は、まずは当事者の話し合いで決めるとはいっても、ある程度の基準となる金額がなければ話し合いを進めることができません。このような場合には裁判所が公表している「養育費算定表」を利用するのがおすすめです。
養育費算定表は、子どもの人数・年齢と当事者双方の収入がわかれば、簡単に養育費の相場を把握できる便利なツールです。家庭裁判所の調停や審判でも用いられていますので、養育費算定表による養育費の金額には、一定の妥当性があるといえるでしょう。
当事者同士の話し合いでは、なかなか金額が決まらないという場合には、養育費算定表により導かれた金額を目安に話し合いをしてみるとよいでしょう。 -
(2)個別事情に基づいて修正が必要になるケースもある
養育費算定表は、簡易かつ迅速に養育費の相場を把握できる、非常に便利なツールですが、あくまでも一般的な養育費の相場にすぎません。たとえば、養育費算定表では「公立の学校に通っている」ことを前提としていますので、私立の学校に通っているなどの事情がある場合には、養育費算定表の金額では実態に合わないこともあります。
このように養育費算定表による金額には、夫婦や子どもの個別事情は考慮されていませんので、特別な事情があるような場合には、それを別途考慮して金額を修正していかなければなりません。 -
(3)養育費に含まれないお金についてもしっかりと決めておく
子どもが成長していくにあたっては、養育費以外にも以下のようなお金が必要になることがあります。
- 大学の入学金、学費
- 留学費用
- 塾や習い事の費用
- 制服代
- 突発的な病気や怪我の治療費
これらのお金は、金額も高額になりますので、監護親の収入だけでは賄えないこともあります。将来生じる可能性のあるこれらの費用についても、あらかじめ定めておけば、後々これらの費用をめぐってトラブルが生じるのを防ぐことができます。
意外と忘れがちな項目になりますが、しっかりと取り決めておくことが大切です。
4、養育費を取り決める際の注意点
養育費の取り決めをする際には、以下の点に注意が必要です。
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(1)公正証書を残しておく
当事者同士の話し合いがまとまったら書面を残しておくことが大事だと説明しましたが、単なる合意書ではなく、公正証書の形で残しておくことができればより安心です。
公正証書は、公証役場の公証人により作成される文書になりますので、作成にあたっては、手間と費用がかかります。しかし、強制執行認諾文言付きの公正証書であれば、相手が養育費の支払いを怠ったとしても、裁判をすることなく直ちに相手の財産を差し押さえることができます。
相手としても、養育費を滞納すると給料や預貯金を差し押さえられてしまうというリスクがあることから、きちんと養育費の支払いを続ける動機にもなるため、養育費不払いのリスクを減らすことができます。 -
(2)養育費を取り決めたとしても事情変更により減額される可能性がある
養育費の取り決めをしたとしても、その後の事情変更により養育費の金額が減らされる可能性もありますので注意が必要です。
養育費を減額されるような事情変更にあたるものとしては、以下の事情が挙げられます。- 監護親が再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組をした
- 非監護親が再婚して、扶養家族が増えた
- 非監護親が病気や事故により働けなくなり、収入が減少した
- 監護親が正社員として採用され、収入が増加した
このような事情がある場合には、相手から養育費の減額が求められる可能性があります。それに応じなかったとしても、家庭裁判所の調停や審判により、養育費の減額が認められる可能性もあります。
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(3)早めに弁護士に相談する
養育費の取り決めを行う場合には、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。
離婚理由がDVやモラハラなどであった場合には、離婚後、相手に連絡すること自体ストレスに感じることもあると思います。また、お互いに感情的になってしまい話し合いが進まないというケースもあるでしょう。
弁護士であれば、本人に代わり、相手との交渉を行うことができますので、ストレスなくスムーズに話し合いを進めることができます。また、養育費の相場も理解していますので、個別事情も踏まえて、適正な金額や期間での合意を目指すことも可能です。交渉が決裂して、調停や審判になったとしても引き続きサポートしてもらうことができますので、安心して任せることができるでしょう。
5、まとめ
離婚時に養育費を取り決めていなかった場合でも、相手に対して、養育費を請求することは可能です。過去の養育費の請求は難しいけれども、新しく養育費を取り決めることは可能ですので、早めに相手と連絡をとり、養育費の請求を行っていくようにしましょう。
養育費の取り決めは、まずは当事者同士で話し合いが行われることが一般的です。話し合いがまとまらなかったとしても、家庭裁判所の調停または審判により決めることもできます。
このような養育費の取り決めにあたっては、離婚問題の解決実績がある弁護士のアドバイスやサポートが重要になります。養育費や離婚時のトラブルでお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 津オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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